「からくり富」泡坂妻夫

一話一話それなりに事件が起こっているのだけど、なぜか話が坦々と進んでいるように感じる。それでもあんまりつまらないなあって思わないのは、私がこの本で江戸の雰囲気を楽しんでいるからかなあ、なんて思ったり。色々な江戸の行事や風習とかが随分丁寧に書いてあるような気がして。あと着物の描写。「光沢のある黒縮緬の江戸褄、模様は秋の草花の散らして、帯は西陣の銀の綴」とか「黒地抜きの五つ紋の白麻の流水模様の裃」とか、「越後縮緬の鼠の縞に黒七子の半襟をかけ、黒繻子の丸帯を小ぶりに締めて」なんていうのを読みながら想像するのが楽しいっていうね。泡坂さんの話は、男女問わず着物の描写が多くて楽しい。「猿曳駒」は夢裡庵ナイスジャッジ。

からくり富

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