「雀の手帳」幸田文

2ページ程度の短いエッセイばかりでとても読みやすい。料理、着物、季節の行事、言葉、などなど身近なテーマなのだけど平坦な感じがなく、テンポよく読める。全体的に「しゃきっとした女性」という雰囲気で、気も強そうだし、男勝りな所もあるけれど、今はあまり美徳とされないような女性としての心配りや、身のこなしなんかも沢山書いてある。いつもダラーっと過ごしている自分が読むと、自分の生活のだらしなさを恥ずかしく思えてきます。

中に書いてあった「丁寧に日々を過ごしているか」っていう所にハッとさせられましたよ。もう少しちゃんとしろ自分!って。この人のエッセイが鼻につかないのは「こうした方がいい」という所では「そう思いつつも出来ない自分に反省」をしてみたり、「そんな事をするもんじゃない」と諌めながら「そんな事をしてしまう自分を顧みたり」と、理想だけを言うでもなく、かといって出来ない自分を卑下ばかりするでも無い所が、読んでいても堅苦しすぎずでもゆるすぎずでいい。

これに限らず幸田文のエッセイを鞄に入れておき、フッと手持ち無沙汰な時に読むと「いかんいかん」と背筋がのびます。

雀の手帖 (新潮文庫)

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