「御宿かわせみ(八)」平岩弓枝

この巻はもう表題にもなってる「白萩屋敷の月」にかぎる。


「白萩屋敷の月」というか、それに出てくる香月という女性と言うか。この女性、若かりし頃に東吾の兄の通之進に惚れるがそい遂げる事ままならぬまま、別の随分と年上の男と結婚する訳だ。通之進も憎からず思っていたらしいがどうにもならず、その結婚の際に一句詠みそれを祝いに渡す。で、この香月はずーっとその句(短冊)を大事に持っていて、あげく家が火事になった時にそれを取りに行って、美しい顔の半分に大火傷をおってしまう。その後、旦那は無くなり、一人ひっそりその句を大事にしながら暮していたところに東吾だ。


通之進の使いで香月に会った訳だが、病で先が短いと悟り、なんと通之進の代わりに東吾が香月を抱いてしまう訳だ。でもってそれが引き金になったかどうかはわからないけど、しばらくして呆気無く無くなってします。

書き様によっては、えらく下世話な話でもあるけれど、私はねえ、何ともグッと来ましてねえ、あれなのですよ(どれだ)。長い間まったく会わないのに思い続ける香月、それとなくその気持ちもわかりつつもでもなんともあれでどうしようもない通之進、それに気が付いているけど見守るだけの通之進の妻の香苗、通之進と香月の心のどちらも察しながら香月を抱いてしまう東吾。まいったなあ。…私がまいってどうする。


いやー、ドキドキするお話でした。